有栖川有栖 Arisugawa Arice

 1986年に「やけた線路の上の死体」が『無人踏切』に採用される。
 2003年に『マレー鉄道の謎』で日本推理作家協会賞を受賞。


著作リスト
長編 作品集 中・短編 その他
月光ゲーム
孤島パズル
マジックミラー
46番目の密室
双頭の悪魔
ダリの繭
海のある奈良に死す
スウェーデン館の謎
幻想運河
朱色の研究
幽霊刑事
マレー鉄道の謎

まほろ市の殺人 冬
虹果て村の秘密
乱鴉の島
ロシア紅茶の謎
山伏地蔵坊の放浪
ブラジル蝶の謎
英国庭園の謎
ジュリエットの悲鳴
暗い宿
ペルシャ猫の謎
作家小説
絶叫城殺人事件
スイス時計の謎
白い兎が逃げる
モロッコ水晶の謎
やけた線路の上の死体
ローカル線とシンデレラ
仮装パーティの館
登竜門が多すぎる
崖の教祖
毒の晩餐会
タイタンの殺人
死ぬ時はひとり
人喰いの滝
老紳士は何故……?
ロシア紅茶の謎
割れたガラス窓
ルーンの導き
動物園の暗号
望月周平の秘かな旅
屋根裏の散歩者
落とし穴
開かずの間の怪
赤い稲妻
八角形の罠
妄想日記
二十世紀的誘拐
裏切る眼

夜汽車は走る
蝶々がはばたく
三つの日付
彼女か彼か
完璧な遺書
竜胆紅一の秘密
ブラジル蝶の謎
黒鳥亭殺人事件
天馬博士の昇天
ジャバウォッキー
雨天決行
世紀のアリバイ
暗号を撒く男
パテオ
猫と雨と助教授と
壺中庵殺人事件
英国庭園の謎
わらう月
月宮殿殺人事件
危険な席
切り裂きジャックを待ちながら
遠い出張
悲劇的
多々良探偵の失策
幸運の女神
赤い帽子
ジュリエットの悲鳴
雪華楼殺人事件
女彫刻家の首
書く機械
殺しにくるもの
ペルシャ猫の謎
締切二日前
暗い宿
夢物語
ホテル・ラフレシア
あるYの悲劇
サイン会の憂鬱
瑠璃荘事件
紅雨荘殺人事件
書かないでくれます?
瑠璃荘事件
異形の客
不在の証明
作家漫才
201号室の災厄
シャイロックの密室
絶叫城殺人事件
奇骨先生
地下室の処刑
ABCキラー
比類のない神々しいような瞬間
砕けた叫び
スイス時計の謎
蕩尽に関する一考察
白い兎が逃げる
助教授の身代金
モロッコ水晶の謎
猿の左手
・エッセイ集
有栖の乱読
作家の犯行現場
謎は解ける方が魅力的
正しく時代に遅れるために


・共著
鮎川哲也読本
本格ミステリーを語ろう![海外編]
有栖川有栖の密室大図鑑

・編集
有栖川有栖の本格ミステリ・ライブラリー
有栖川有栖の鉄道ミステリ・ライブラリー


・評論
迷宮逍遙
赤い鳥は館に帰る

・監修
新本格謎夜会



やけた線路の上の死体

 初出:光文社/光文社文庫『鉄道ミステリー傑作選 無人踏切』収録(1986年11月)


月光ゲーム Yの悲劇’88

 初出:東京創元社(1989年01月)

 東京創元社/創元推理文庫 Mあ2-1(1994年07月) 解説:山前譲

 矢吹山にキャンプ場へ夏合宿のため訪れた英都大学推理小説研究会(EMC)の一行。そこで偶然一緒になった他大学のグループ二組。
 キャンプ三日目、予想だにしない出来事が一行を襲う。矢吹山が噴火し、キャンプ場へ閉じこめられてしまうのだ。そして、最悪の事態が起こる……それは殺人だった。
 犯行現場に残された「Y」のダイイング・メッセージ。陸の孤島。そして読者への挑戦状。本格推理小説の王道を行く日本のエラリー・クイーン、有栖川有栖の処女長編。

 陸の孤島――いわゆる“クローズド・サークル”ものの作品です。青春小説のような雰囲気もあって、なかなか良いですね。なかなかというかもの凄く良いんですけど。ちなみに僕は有栖川有栖先生の大ファンです。それがどうした、なんて言わないで下さいね。
 ダイイング・メッセージの謎が解かれたときは、本当に感動しました。何故アレが解らなかったんだろう、と。異を唱える人も多数居ますが(苦笑)。マーダー・ゲームとかも読んでいて楽しかったですしね。ただ登場人物が多い多い。クイーンのアレみたいじゃないですか。いや、アレほどではないか(笑)。
 探偵役はEMC部長の江神二郎です。江神部長で思い出したんですけど、彼の幻の巨編『赤死館殺人事件』を読んでみたいのは僕だけですか?

Update:2000/11/22


孤島パズル

 初出:東京創元社(1989年07月)

 東京創元社/創元推理文庫 Mあ2-2(1996年08月) 解説:光原百合

 英都大学推理小説研究会の唯一の女性部員・有馬麻里亜の提案した、ある夏休みのお楽しみ。それは、推理研にはぴったりの“宝捜し”であった。
 都合により参加できず、悔しがる望月周平らをしり目に、江神部長・マリア・アリスの三人は、その“宝捜し”の舞台となる南海の孤島「嘉敷島」へと赴いた。その島はマリアの伯父が所有するもので、その友人知人らも集まっていた。そして、お約束のように嵐がやってきて……。

 で、殺人と相成るわけであります。“いかにも”ですね。これが良いんですね。たまらないんですね。古臭いと言われようと、ご都合主義だと言われようと、僕はこの趣向大好きです。何で読んでも飽きません。
 この作品は派手なトリックは出てきません。もうロジックロジックです。アレとかアレとか、解決読むと、もうぞくりときますね。過去の事件との絡みとか、なにげに密室も出てきたり、ダイイング・メッセージなんかもあったり。盛りだくさんですね。
 すらすらっと読めてしまいます。コレはお薦め。

Update:2001/07/12


マジックミラー

 初出:講談社/講談社ノベルス(1990年04月)

 講談社/講談社文庫 あ58-1(1993年05月) 解説:鮎川哲也


ローカル線とシンデレラ

 初出:「コットン」掲載(1990年04月)

 →『山伏地蔵坊の放浪』収録


仮装パーティの館

 初出:「コットン」掲載(1990年11月)

 →『山伏地蔵坊の放浪』収録


登竜門が多すぎる

 初出:東京創元社『鮎川哲也と十三の謎'90』収録(1990年12月)

 →『ジュリエットの悲鳴』収録


崖の教祖

 初出:祥伝社「小説NON」掲載(1991年03月)

 →『山伏地蔵坊の放浪』収録


毒の晩餐会

 初出:「コットン」掲載(1991年09月)

 →『山伏地蔵坊の放浪』収録


タイタンの殺人

 初出:新潮社「小説新潮」掲載(1992年02月)

 →『ジュリエットの悲鳴』収録


46番目の密室

 初出:講談社/講談社ノベルス(1992年03月)

 講談社/講談社文庫 あ58-2(1995年03月) 解説:綾辻行人

 日本のディクスン・カーと称される推理小説の巨匠・真壁聖一は、密室と化した書庫の暖炉で上半身を焼かれながら、死んでいた。
 彼の邸宅である〈星火荘〉で催されたクリスマス・パーティに招待されていた推理作家・有栖川有栖と犯罪学者・火村英生は、この事件の謎に迫ることに。
 邸のドアに書かれた白いXの文字、窓に書かれた白いハートマーク、階段にぶちまけられた石灰、招待客の靴に注がれた白ワイン、部屋中に広げられたトイレットペーパーなどなど、これらは一体何を意味するのか? そして邸の周りを徘徊する焦げ茶色のブルゾンを着た不審者……。

 もう大好きこの作品。
 僕がミステリを読み始めたばかりの時に読んだ作品なんですコレ。なのでディクスン・カーがどんな人かも知らなかったという(笑)。で、今回再読してみて、いやあ、やっぱり好きです。まず密室ってだけでもう良いなあ、と思ってしまうのです(単純)。しかもロジック炸裂でしょう。うーんたまりません。
 さらにさらに僕の大好きな探偵・火村英生が出て来るんですから。無神論者だ、って宣言してしまうところが格好良い。ちょっとシニカルなところも良い。そう、僕はいわゆるヒムラーなのです(笑)。
 ちゅうわけで、いつものやつ行きます。未読の人は読んでね(笑)。
 ああ、「天上の推理小説」読んでみてぇ〜!!(解る人は解って下さい)

Update:2001/07/12


双頭の悪魔

 初出:東京創元社(1992年02月)

 東京創元社/創元推理文庫 Mあ-2-3(1999年04月) 解説:巽昌章

 高知県。
 芸術家たちの村「木更村」へと赴いたまま有馬麻里亜が帰ってこない。心配した麻里亜の父親が麻里亜も所属する英都大学推理小説研究会の面々に相談を持ちかける。
 かくして推理研の面々は一路高知県夏森村へと向かった。その村の隣に木更村はあるのだ。
 そして麻里亜に接触を試みる――が、本人が拒み会おうとしない。無理に村に入ろうとしてもそこの住民に追い返される。そこで密かに潜入を図り、部長・江神のみが村に残ることに成功した。
 ――だが皮肉にもそこで夏森村と木更村を繋ぐ唯一の吊り橋が断絶されてしまい、木更村には江神部長と麻里亜、夏森村には有栖・望月・織田と離ればなれになってしまう。
 そして双方の村で殺人事件が起きる。

 誰が何と言おうと僕のベスト1ミステリ(二つあるんですがね)です。本格ミステリの神髄ここにあり! です。
 思う存分「推理」が楽しめます。派手なトリックはありません。ロジックの積み重ねがこの作品の魅力です。木更村ではクローズドサークルという環境の中、江神部長が静かに奮闘します。夏森村では幾分賑やかに有栖、他二名(笑)が推理を繰り広げます。そのどちらもが読んでいてとても楽しい。
 江神部長は一人黙々と推理を行うのに対し、有栖たちはディスカッションを重ねながら推理を行っていきます。前者では鋭いロジックのキレを。後者では推理→否定→新たな推理→否定→さらに……という推理の愉しみをそれぞれ味わえます。
 そして三度も挿入される「読者への挑戦状」。ええ、初読の時は本気で挑みましたとも。全部はずれたに決まってます(笑)。でも解決編を読んだら何で解らなかったんだろう? と思うほど簡単なことなのですよね。とんでもない論理の飛躍っていうのもないですし。こういうところが身近に感じられて好きです。キャラの魅力もそれをさらに強めてくれます。
 そういうことなので是非ご一読を。巽昌章氏も大絶賛でっせ。
 ああ、はやくこのシリーズの続きが読みたい……。

 Update:2001/11/12


死ぬ時はひとり

 初出:「コットン」掲載(1992年06月)

 →『山伏地蔵坊の放浪』収録


人喰いの滝

 初出:立風書房『奇想の復活』収録(1992年09月)

 →『ブラジル蝶の謎』収録


老紳士は何故……?

 初出:東京創元社『競作 五十円玉二十枚の謎』収録(1993年01月)


ロシア紅茶の謎

 初出:祥伝社「小説NON」掲載(1993年02月)

 →『ロシア紅茶の謎』収録


割れたガラス窓

 初出:祥伝社「小説NON」掲載(1993年02月)

 →『山伏地蔵坊の放浪』収録


ルーンの導き

 初出:「歴史読本増刊」掲載(1993年04月)

 →『ロシア紅茶の謎』収録


動物園の暗号

 初出:講談社「小説現代増刊」掲載(1993年05月)

 →『ロシア紅茶の謎』収録


屋根裏の散歩者

 初出:中央公論社「小説中公」掲載(1993年10月)

 →『ロシア紅茶の謎』収録


落とし穴

 初出:「週間小説」掲載(1993年10月15日)

 →『ジュリエットの悲鳴』収録


ダリの繭

 初出:角川書店/角川文庫 あ26-1(1993年12月)


開かずの間の怪

 初出:角川書店「野生時代」掲載(1994年01月)

 →『ミステリーアンソロジー 密室』収録


赤い稲妻

 初出:祥伝社「小説NON」掲載(1994年03月)

 →『ロシア紅茶の謎』収録


八角形の罠

 初出:講談社「小説現代増刊 メフィスト」掲載(1994年04月)

 →『ロシア紅茶の謎』収録


妄想日記

 初出:講談社「小説現代増刊」掲載(1994年07月)

 →『ブラジル蝶の謎』収録


ロシア紅茶の謎

 初出:講談社/講談社ノベルス(1994年08月)

 講談社/講談社文庫 あ58-3(1997年07月) 解説:近藤史恵

 収録作品
 動物園の暗号/屋根裏の散歩者/赤い稲妻/ルーンの導き/ロシア紅茶の謎/八角形の罠

 火村英生&アリスの国名シリーズ第1弾であり、著者初の作品集となる記念すべき一冊。

「動物園の暗号」
 大阪府立阿倍野動物園の飼育員の男性が、鈍器で殴られて殺害され、園内の猿山に投げ落とされていた。その被害者の手には被害者自身が作ったものと思われる、暗号のようなものが記された一枚の紙切れが。

「屋根裏の散歩者」
 あるアパートの管理人は、店子の生活する様子を屋根裏を這い回って観察するという、奇妙な趣味を持っていた。その管理人が殺害され、被害者の部屋からは、自分の「趣味」を綴った日記が発見された。そこには、世間を騒がせている女性連続殺人事件の犯人を示す記述が。

「赤い稲妻」
 雷鳴の轟くある夏の日。青年は、向かいのマンションのベランダから女性が突き落とされる瞬間を自室の窓際から目撃した。驚きつつも、詳しく見ようと思いオペラグラスを取りに戻り、再び問題のベランダを覗いたが、そこに犯人の姿はなかった。
 しかし、警察が調べたところ、青年の言うベランダがある部屋の玄関はチェーンロックが掛けられ、犯人の逃げ出す道はなかった。

「ルーンの導き」
 中国系アメリカ人男性が、ルーン文字の刻み込まれた4つの石を握り締めて殺害されていた。容疑者は外国人、翻訳家の4人。ダイイング・メッセージの意味は一体?

「ロシア紅茶の謎」
 作詞家が自宅で催されたパーティの最中に中毒死した。彼を死に至らしめたのは、パーティの際に出されたロシア紅茶の中から検出された青酸カリだった。いつ、どこで、紅茶の中に毒物が?

「八角形の罠」
 八角形のホールを持つ尼崎アルカディアホール・オクトで上演される、有栖川有栖原作の推理劇『八角形の殺人』のゲネプロの最中、俳優の一人が停電してしまった暗闇の部屋で毒殺されてしまう。たまたま見学のため訪れていた火村はこの事件どう解く?

 さあさあ、僕が初めて読んだ本格ミステリの紹介です。今回再読して、改めて良いなあ、と感動しました。
 密室はあるは、ダイイング・メッセージは出てくるは、毒殺ものや暗号ものや「読者への挑戦状」まで! なんと贅沢な作品集でしょうか! これを一番最初に読んだ僕は幸せ者です。ええ、誰が何と言おうとも。
 全部大好きな作品なのですが、特に好きなのが「屋根裏の散歩者」と「赤い稲妻」です。前者は乱歩の同タイトルの短編と状況設定は似ています。似ているというのは後から読んで知ったんですけどね。後者は最後の火村のセリフがたまりません。そういえばこれが初めて読んだ密室ものになりますね。
 とにかく僕にとってはかなり思い入れのある作品集なんです。色んな人に読んで欲しいんです。読んでみて面白くなかったら、まぁ、それはそれで(笑)。

Update:2001/04/24


二十世紀的誘拐

 初出:角川書店「野生時代」掲載(1994年08月)

 →『ミステリーアンソロジー 誘拐』収録


裏切る眼

 初出:「週間小説」掲載(1994年09月30日)

 →『ジュリエットの悲鳴』収録




 初出:祥伝社「小説NON」掲載(1995年01月)

 →『ブラジル蝶の謎』収録


夜汽車は走る

 初出:「週間小説」掲載(1995年01月20日)

 →『ジュリエットの悲鳴』収録


海のある奈良に死す

 初出:双葉社(1995年03月)

 角川書店/角川文庫 あ26-2(1998年05月) 解説:我孫子武丸


蝶々がはばたく

 初出:講談社「小説現代」掲載(1995年03月)

 →『ブラジル蝶の謎』収録


スウェーデン館の謎

 初出:講談社/講談社ノベルス(1995年05月)

 講談社/講談社文庫 あ58-4(1998年05月) 解説:宮部みゆき

 小説の取材のため、有栖川有栖は雪深い裏磐梯の「サニーデイ」というペンションを訪れた。そして、そのログハウス風のペンションの近くには“スウェーデン館”と呼ばれる童話作家の館が静かにたたずんでいた。
 そして数日後、事件は起きた。雪に取り囲まれたスウェーデン館の離れで、女流画家が殴殺されていたのだ。しかし離れの外には犯人の足跡は残されていなかった・・・。
 有栖によって呼び寄せられた臨床犯罪学者・火村英生は、この悲しみに満ちた事件をどう解く?

 今のところ国名シリーズ中で唯一の長編です。そして“足跡のない殺人”の佳作でもあります。火村シリーズの中ではこの作品か『46番目の密室』がベストだと思いますね。何で有栖が呼んだらすぐに火村はやってくるんだ、とか色々言われていますが(笑)、そんなに気になりますかねえ? ま、僕は、かなりの有栖川ファンなのでかなり偏った読み方をしているかも知れません(笑)。
 いやあ哀しいお話です。雪っていうのがまた良いですねえ。再読したいなあ……。

Update:2001/02/26


幻想運河

 初出:実業之日本社「週間小説」連載(1995年07月〜12月)

 実業之日本社(1996年04月)

 講談社/講談社ノベルス(1999年)

 講談社/講談社文庫 あ58-8(2001年01月) 解説:大村アトム

――大阪。
   川を流れる女性の四肢――
――アムステルダム。
   運河を流れる男性の四肢――
 このふたつの水都をめぐる物語を彩るのは、ドラッグ、バラバラ殺人、そして、  薔薇   薔  薇

 さて、わけの解らん紹介で申し訳ありません。なんだか、うだうだ説明するのは無粋かなぁ、と思ったもので。
 確かに有栖川有栖裏ミステリでしたね。ベストかどうかは知りませんが。「幻想」的な本格ミステリです。この紹介を読んで、少しでも気になった方は読んでみて下さい。
 あ、そうだ。有栖川氏はこんな作品ばっかり書いてるんじゃないですよ〜。コレを読んで「なあんだ」と思わないで下さい。この作品はかなり異色です。はい。

Update:2001/02/05


三つの日付

 初出:角川書店「野生時代」掲載(1995年08月)

 →『英国庭園の謎』収録


彼女か彼か

 初出:講談社「小説現代増刊 メフィスト」掲載(1995年11月)

 →『ブラジル蝶の謎』収録


完璧な遺書

 初出:祥伝社「小説NON」掲載(1995年12月)

 →『英国庭園の謎』収録


竜胆紅一の秘密

 初出:祥伝社「小説NON」掲載(1996年04月)

 →『英国庭園の謎』収録


ブラジル蝶の謎

 初出:講談社「小説現代増刊 メフィスト」掲載(1996年04月)

 →『ブラジル蝶の謎』収録


黒鳥亭殺人事件

 初出:新潮社「小説新潮」掲載(1996年04月)

 →『絶叫城殺人事件』収録

山伏地蔵坊の放浪

 初出:東京創元社(1996年04月)

 東京創元社/創元推理文庫 Mあ2-4(2002年07月) 解説:戸川安宣

 収録作品
 ローカル線とシンデレラ/仮装パーティの館/崖の教祖/毒の晩餐会/死ぬ時はひとり/割れたガラス窓/天馬博士の昇天(書き下ろし)

 口髭を蓄えたダンディーなマスターの営業する、ここスナック『えいぷりる』では紳士服店の若旦那、街一番の藪歯医者、写真館を営む夫婦、レンタルビデオ屋で生計を立てている僕、そして山伏がテーブルを囲んでいた。毎週土曜日に山伏の語る物語を拝聴しに集まっているのだ。

 地蔵坊の話──

「ローカル線とシンデレラ」
 鉱業会社のローカル私鉄の上りと下りが入れ違うポイントに、それぞれの列車が差し掛かったとき、一方の列車の中で殺人が行われた。偶然もう一方の列車に居合わせた山伏は事件を解決してしまうのであった。

「仮装パーティの館」
 昼寝をしていてすっかり宿を取りそこねてしまった山伏は、仕方なく野宿のポイントを捜してうろついていた。すると白樺林の向こうに館があるではないか。門の所まで近づいてみると、偶然そこへ一台の車が通りかかった。親切に門を開けると、車の運転者は礼を述べた。そしてその男の姿を見て山伏はぎょっとした。狼男だったのだ。さらに隣には四谷怪談のお岩の姿をした女性が。そうこの館では仮装パーティが行われていたのである。山伏も仮装していると間違えられ館へ招かれてしまったが……。そして殺人。

「崖の教祖」
 娘がいかがわしい新興宗教にかぶれてしまったので何とか助け出してくれと請われた山伏は、その総本山へ崖から侵入する。その日は追い返されてしまった。
 次の日。その新興宗教の教祖が爆弾によって殺されてしまう。

「毒の晩餐会」
 知己の男の家を訪ねると、ぜひ食事でもしていってくれと誘われた山伏。言葉に甘えて晩餐に加わったのは良いが、またしてもそこで人が死んでしまった。遺産相続でもめていた矢先の出来事で、しかもその中心人物が毒死してしまったのだ。いかにして毒はこの男のビールジョッキに入り込んだのか。そして入れたのは誰か。

「死ぬ時はひとり」
 ひょんなことで元極道の経営する小さなスナックへと赴くことになった山伏だったが、そこで元極道の落ちぶれるまでの話を聞かされる羽目になった。そして中座したその元極道が奥の部屋で拳銃の弾をくらって死んでしまう。強盗でも入ったのか? ……しかし犯人の逃走するルートはなかった。つまり密室である。
 彼は自殺したのか、それとも。

「割れたガラス窓」
 地面にはいつくばってトリュフを捜していた男の手助けをして、食事に招かれることになった山伏。もう少しで食事だ、という時にデッキでくつろいでいた山伏の耳にガラスの割れる音が届いた。音のした部屋へ急いで向かってみると、そこには死体が転がっていた。ガラスの破片は家の外へ散乱しており、その原因となったのは部屋にあった本がぶつけられたためだと思われた。
 警察が到着し、捜査が進むとガラスの割れた音がしたときには、邸に居合わせた皆にアリバイがあることが判明した。

「天馬博士の昇天」
 雪の降り積もった庭には奇妙な足跡が一筋残されていた。その足跡はあっちへふらふらこっちへふらふらと進み、崖へと達していた。そしてその崖の下には発明家である天馬博士の死体が発見された。頭部には何かで殴られたような跡が残されており、他殺であると思われる。しかし崖の上にある足跡は博士の履いていた靴と同じものであった。

 とまあこんな感じで七つのお話が山伏によって語られるわけですが、どれもバカバカしいです(笑)。ですが、面白いので良し。
「ローカル線とシンデレラ」「仮装パーティの館」「崖の教祖」はあまりパッとしないんですが、残りの四編はどれも素晴らしいです。いや、バカバカしいのはバカバカしんですけどね。特にラストの一編なんか……ねぇ。
 何気なく同じ作者の他のシリーズとのつながりがほのめかされていたりするのにもニヤリと出来ます。
 他にも面白い点がこの作品集には趣向もあるんですが、詳しくは戸川氏の解説でどうぞ(笑)。いや、この解説本当に素晴らしいんです。
 ……何を勧めて居るんだ僕は。

Update:2003/01/16


ブラジル蝶の謎

 初出:講談社/講談社ノベルス(1996年05月)

 講談社/講談社文庫 あ58-5(1999年05月) 解説:椎谷健吾

 収録作品
 ブラジル蝶の謎/妄想日記/彼女か彼か//人喰いの滝/蝶々がはばたく


ジャバウォッキー

 初出:新潮社「小説新潮」掲載(1996年10月)

 →『英国庭園の謎』収録


雨天決行

 初出:講談社「小説現代増刊 メフィスト」掲載(1996年12月)

 →『英国庭園の謎』収録


世紀のアリバイ

 初出:新潮社「小説新潮」掲載(1996年12月)

 →『ジュリエットの悲鳴』収録


暗号を撒く男

 初出:祥伝社「小説NON」掲載(1997年02月)

 →『ペルシャ猫の謎』収録

パテオ

 初出:「週間小説」掲載(1997年02月21日)

 →『ジュリエットの悲鳴』収録


猫と雨と助教授と

 初出:講談社「IN☆POCKET」掲載(1997年04月)

 →『ペルシャ猫の謎』収録

壺中庵殺人事件

 初出:新潮社「小説新潮」掲載(1997年04月)

 →『絶叫城殺人事件』収録
 →『大密室』収録

英国庭園の謎

 初出:講談社「小説現代増刊 メフィスト」掲載(1997年05月)

 →『英国庭園の謎』収録


英国庭園の謎

 初出:講談社/講談社ノベルス(1997年06月)

 講談社/講談社文庫 あ58-6(2000年06月) 解説:喜国雅彦

 収録作品
 雨天決行/竜胆紅一の秘密/三つの日付/完璧な遺書/ジャバウォッキー/英国庭園の謎


わらう月

 初出:講談社「小説現代」掲載(1997年06月)

 →『ペルシャ猫の謎』収録

月宮殿殺人事件

 初出:祥伝社「小説NON」掲載(1997年07月)

 →『絶叫城殺人事件』収録

危険な席

 初出:「週間小説」掲載(1997年07月25日)

 →『ジュリエットの悲鳴』収録


切り裂きジャックを待ちながら

 初出:講談社「IN☆POCKET」掲載(1997年10月)

 →『ペルシャ猫の謎』収録

朱色の研究

 初出:角川書店(1997年11月)

 角川書店/角川文庫 あ26-3(2000年08月) 解説:飛鳥部勝則


遠い出張

 初出:「TOKYO1週間」掲載(1997年11月25日)

 →『ジュリエットの悲鳴』収録


悲劇的

 初出:講談社「小説現代増刊 メフィスト」掲載(1997年12月)

 →『ペルシャ猫の謎』収録

多々良探偵の失策

 初出:「TOKYO1週間」掲載(1997年12月09日)

 →『ジュリエットの悲鳴』収録


幸運の女神

 初出:「TOKYO1週間」掲載(1997年12月23日)

 →『ジュリエットの悲鳴』収録


赤い帽子

 初出:「なにわ」連載(1997年12月〜1998年11月)

 →『ペルシャ猫の謎』収録

ジュリエットの悲鳴

 初出:「週間小説」掲載(1998年01月09日)

 →『ジュリエットの悲鳴』収録


ジュリエットの悲鳴

 初出:実業之日本社(1998年04月)

 実業之日本社/ジョイ・ノベルス(2000年07月)

 角川書店/角川文庫(2001年08月) 解説:福井健太

 収録作品
 落とし穴/裏切る眼/遠い出張/危険な席/パテオ/多々良探偵の失策/登竜門が多すぎる/世紀のアリバイ/タイタンの殺人/幸運の女神/夜汽車は走る/ジュリエットの悲鳴

 今回は収録作品の量が多いのでいちいち箇条書きにして紹介しません(手抜き)。
「落とし穴」は会社の同僚を殺そうとする、倒叙ミステリ。
「裏切る眼」「危険な席」「夜汽車は走る」は……何だろうなあ、本格とは断言できませんがミステリです。
「遠い出張」「多々良探偵の失策」「世紀のアリバイ」「幸運の女神」はショートショート。中でも「世紀のアリバイ」は素晴らしいです。
「パテオ」「登竜門が多すぎる」「ジュリエットの悲鳴」はミステリではありません。「登竜門〜」は笑えます。「ジュリエットの悲鳴」は……読めば解ります。
「タイタンの殺人」はSF本格ミステリ。読者への挑戦状が挿入されている“当てもの”です。
 えっと、これで全部紹介したかな? とにかく読みましょう。どの作品も面白いです。以上終わり。

Update:2001/01/30


雪華楼殺人事件

 初出:新潮社「小説新潮」掲載(1998年06月)

 →『絶叫城殺人事件』収録

女彫刻家の首

 初出:祥伝社「小説non増刊」掲載(1998年11月)

 →『スイス時計の謎』収録

書く機械

 初出:実業之日本社「週刊小説」掲載(1998年12月21日)

 →『作家小説』収録

殺しにくるもの

 初出:「ポンツーン」掲載(1999年02月)

 →『作家小説』収録

幽霊刑事

 初出:講談社「IN☆POCKET」連載(1999年03月〜2000年03月)

 講談社(2000年05月)

 講談社/講談社ノベルス(2002年07月)

 講談社/講談社文庫 あ58-11(2003年07月)

 俺は東雲署の刑事・神崎達也。いや元刑事と言うべきか  そう俺は死んだのだ。上司の経堂課長に射殺されて……。
 しかし何故か気がついてみると幽霊となってこの世にとどまっていた。だが家族にも恋人の須磨子にも俺の姿は見えず、声すら届かなかった。ところが、署の同僚である早川篤にだけは俺の姿が見え、会話もできてしまうのだ。
 かくして、少々頼りないこの相方を得ることが出来た俺は、俺を殺した経堂を追いつめようとするのだが……。

 これは面白いです。語り口はユーモラスで、ちょっと切なくて。
 主人公は自分の恋人に声をかけることも触れることもできない。このもどかしさ、良いです。なんか思いっきり感情移入してしまいました。相方の早川君も良いですねえ。どこかちょっと抜けてて。
 あ、そうそうミステリですよ、この作品は。上の文章だとミステリの紹介っぽくないですねぇ。まぁ、いいか。
 ちなみにタイトルは「ゆうれいでか」と読むみたいです。はい。

Update:2001/01/22


ペルシャ猫の謎

 初出:講談社「小説現代増刊 メフィスト」掲載(1999年05月)

 →『ペルシャ猫の謎』収録

締切二日前

 初出:「ポンツーン」掲載(1999年07月)

 →『作家小説』収録

暗い宿

 初出:角川書店「KADOKAWAミステリ」掲載(1999年11月)

 →『暗い宿』収録

夢物語

 初出:「ポンツーン」掲載(1999年12月)

 →『作家小説』収録

有栖川有栖の密室大図鑑

 初出:現代書林(1999年12月)

 新潮社/新潮文庫 あ46-2(2003年01月) 解説:山口雅也

ホテル・ラフレシア

 初出:角川書店「KADOKAWAミステリ」掲載(2000年04月)

 →『暗い宿』収録

あるYの悲劇

 初出:講談社/講談社文庫『「Y」の悲劇』収録(2000年07月)

 →『スイス時計の謎』収録

サイン会の憂鬱

 初出:「ポンツーン」掲載(2000年08月)

 →『作家小説』収録

瑠璃荘事件

 初出:講談社「小説現代増刊 メフィスト」掲載(2000年09月)

紅雨荘殺人事件

 初出:新潮社「小説新潮」掲載(2000年10月)

 →『絶叫城殺人事件』収録
 →『本格ミステリ01』収録

書かないでくれます?

 初出:「ポンツーン」掲載(2000年10月)

 →『作家小説』収録

異形の客

 初出:角川書店「KADOKAWAミステリ」分載(2000年11、12月)

 →『暗い宿』収録

不在の証明

 初出:光文社「ジャーロ No.2」掲載(2001年冬(01月))

 →『白い兎が逃げる』収録

作家漫才

 初出:「ポンツーン」掲載(2001年02月)

 →『作家小説』収録

201号室の災厄

 初出:角川書店「KADOKAWAミステリ」掲載(2001年05月)

 →『暗い宿』収録

シャイロックの密室

 初出:祥伝社「小説non」掲載(2001年05月)

 →『スイス時計の謎』収録

暗い宿

 初出:角川書店(2001年07月)

 角川書店/角川文庫 あ26-6(2003年10月) 解説:川出正樹

 収録作品
 暗い宿/ホテル・ラフレシア/異形の客/201号室の災厄

絶叫城殺人事件

 初出:新潮社「小説新潮」掲載(2001年09月)

 →『絶叫城殺人事件』収録

作家小説

 初出:幻冬舎(2001年09月)

 幻冬舎/幻冬舎文庫 あ23-1(2004年08月) 解説:末國善己

 収録作品
 書く機械/殺しにくるもの/締切二日前/奇骨先生(書き下ろし)/サイン会の憂鬱/作家漫才/書かないでくれます?/夢物語

絶叫城殺人事件

 初出:新潮社(2001年10月)

 新潮社/新潮文庫 あ46-3(2004年02月) 解説:竹島清

 収録作品
 黒鳥亭殺人事件/壺中庵殺人事件/月宮殿殺人事件/雪華楼殺人事件/紅雨荘殺人事件/絶叫城殺人事件

 臨床犯罪学者・火村英夫&推理作家・有栖川有栖の活躍する、収録作品のタイトルが「殺人事件」で統一された作品集。

「黒鳥亭殺人事件」
 火村とアリスの大学時代の友人で、画家の天農仁からアリスの元へ当然電話が掛かってきた。「──火村と来てくれないか」と。七年ぶりに聞くその声には緊張が滲んでおり、ただごとではないと思った二人は、天野の生活する黒鳥亭≠ヨと向かった。その名の通り壁が黒一色に染められた邸へ。
 話を聞くと、なんと邸の裏の井戸から男の変死体が発見されたのだという。そして、この死体が以前この黒鳥亭≠所有していた、男のものであることが解ったのだという……。彼は既に死亡されていたとばかり思われていたのだが……。

 天農の娘・真樹とアリスのやりとりの微笑ましさに思わず頬を緩めていると、思わぬところで見事に背負い投げを食らわされてしまう……といったなかなか印象に残るオチの作品です。完全なる証拠はないとはいえ火村の推理には真に迫るものがあります。ぬけぬけと作中で『Yの悲劇』に言及しているのには、ニヤニヤしてしまいました。
 因みに〈二十の扉〉というゲームをこの作品で初めて知りました。もの凄く面白そうなゲームですねぇ。やってみたい。

「壺中庵殺人事件」
 壺によく似た構造の地下室──そこの主が名付けた名前で言うならば壺中庵>氛氓ナ、当の主人が頸をロープで吊り、頭には壺をかぶせられて殺されているのが発見された。そう、あからさまな偽装自殺である。そして、その地下室への入口は内側から閂が掛けられていたのだという……。

 壺づくしの密室モノです。密室の状況は妙ちくりんですが、収録作品では一番ストレートな本格ミステリです。
 犯人は序盤で察しがついてしまいましたが、密室トリックには感心させられました。偽装自殺という工作が実は密室を構成するために必要な手段だったというのがお見事です。何故頭に壺をかぶせたのかという理由も十分納得できるものです。ラスト一行も決まっています。
 ただ偽装自殺をもっともっと巧妙にして謎を深めても良かったような気がします。

「月宮殿殺人事件」
 アリスは取材の帰りに川べりに建つ奇妙な物を発見した。興味が湧いて彼はそれに近づいていき。たまたま居合わせたホームレスにこれは何かと尋ねた。ホームレス氏曰く、それは周辺に捨てられた廃材などを寄せ集め、独りのホームレスの手によって作られた《ゴミの城》なのだという。そして、この珍妙な城は近隣の者から月宮殿≠ニ呼ばれているのだという。
 それから一年後、フィールドワークの帰りしなにアリスは火村を誘ってこの《ゴミの城》を見に行くことにした。すると、その建築物は放火のために焼け落ち、建築主であるホームレスの男もその中で焼け死んでしまっていた……。

 何とも妙な作品です。フーダニットでもなければハウダニットでもない。敢えて言うならホワイダニットでしょうか。何故なら作者の狙いが、月宮殿≠ニいう名前を「建物」だと取り違えることによって生じる驚きだからです。でもこれでは本格ミステリとは言いにくいのですが、「サボテン」くらいしかない建物に主人が「俺の月宮殿に何をする!」と叫びながら入っていく、という事から、彼の真の目的を推理する過程がロジカルで本格ミステリたらしめているのだと思います。収録作品の中ではずば抜けて異色である作品ですね。
 それから、この作品を短編集のこの位置に配置したのも効果を上げていると思います(建物(黒鳥亭)、建物(壺中庵)、と来て……という、ね)。

「雪華楼殺人事件」
 本来は旅館になるはずだったのだが、開発業者が倒産してしまい工事半ばにして廃ビルと化してしまった雪華楼=Bこの廃ビルに数日前から浮浪者めいた男女三人が棲みつき、近隣の者からこれを放置しておいて良いのかと通報があった矢先の事。突然廃ビルから女性の悲鳴が聞こえてきた。連絡を受けた警察がそこで発見したのは、屋上から墜落して死んでしまったと思われる男の死体であった。彼の遺体の周りには足跡などはなく、そこから墜落したのだろうビルの屋上には男のものと思われる足跡が一筋残されていた。
 しかし……男の後頭部には何かで殴打された痕跡が発見され、自殺ではないことが判明する。

 ちょっと捻りの加えられた雪密室<cmです。こういう状況はたまりません。
 登場人物が少なくて犯人の意外性はほとんどないと言っても良いですが、トリックが意外性抜群です。ホワイダニットあるいはハウダニットの傑作だと思います。うむ……「壺中庵殺人事件」とあまり変わらない感想じゃあないか、これでは。凶器の記述もさりげなくて良いです。

「紅雨荘殺人事件」
 今は無き化粧品会社「ベニッシュ」の元社長・飯島粧子が自宅の紅雨荘≠ナ死んでいるのが発見される。発見者は彼女の息子の一人で、母の死体が張りに結ばれたロープで首を吊っていたのを発見したのだという。ところが、これは自殺などではなく明らかに偽装であることが判明した。
 遺産相続という動機を多分に持つ被害者の子供たち三人には鉄壁のアリバイがあり、被害者と犬猿の仲であった従妹の女性は事件当時にある奇妙な行動をとっていたことが解るのだが……。

 アリバイ崩しモノかと思いきや……という、これまた捻りの利いた作品です。
「アリスの暮らすマンションのバルコニーに干された布団」というのが真の動機解明のヒントになっているという趣向がユニークです。
 犯人は、こんなカーペット最近まで無かったよ? と第三者に証言されることを考えなかったのかい? という小さな疑問は残ります……。

「絶叫城殺人事件」
 ナイフで次々と刺殺されていく若い女性たちの口の中には、「NIGHT PROWLER」などと記された小さな紙片が押し込まれていた。その文字は、一部でカルトな人気を得ているホラー・アドベンチャー・ゲーム絶叫城≠ノ登場する殺人鬼の名前だったのだ!

 掉尾を飾るのは表題作。一番あらすじを書くのが楽(笑)。
 見立て殺人+連続殺人という趣向の作品です。正直、何故絶叫城≠ノ見立てたのか、という理由が判然とせず不満は残ります。しかし連続殺人の秘められたトリックには脱帽です。鮮やかなロジックが決まり、さらにその上を行くロジックが炸裂するという──これぞ本格ミステリ! と絶叫したくなります。
 ラストシーンは不気味で、アリスの吐露する心の闇≠ノ対する痛烈な皮肉(ですよね?)にはニヤリとしてしまいました。


 以上、六作品の感想でした。疲れた。

Update:2004/02/01


地下室の処刑

 初出:光文社「ジャーロ No.5」掲載(2001年秋(10月))

 →『白い兎が逃げる』収録

ABCキラー

 初出:講談社/講談社文庫『「ABC」殺人事件』収録(2001年11月)

 →『モロッコ水晶の謎』収録

作家の犯行現場

 初出:メディアファクトリー(2002年02月)

 新潮社/新潮文庫 あ46-4(2005年01月)

ペルシャ猫の謎

 初出:講談社/講談社ノベルス アL-09(2002年05月)
 ISBN4-06-182027-3

 講談社/講談社文庫 あ58-10(2002年06月) 解説:千街晶之

 収録作品
 切り裂きジャックを待ちながら/わらう月/暗号を撒く男/赤い帽子/悲劇的/ペルシャ猫の謎/猫と雨と助教授と

マレー鉄道の謎

 初出:講談社/講談社ノベルス アL-09(2002年05月)

 友人を訪ねてマレー半島を訪れた臨床犯罪学者・火村英夫と作家・有栖川有栖。そこで彼らはまたしても事件に巻き込まれてしまった。
 ハリマオ・コテージと呼ばれる屋敷の敷地内に置かれたトレーラーハウスで、男性が胸にナイフを刺したままの格好で発見されたのだ。しかもキャビネットに収まって。さらに現場は内側からガムテープで《目張り》がなされており、外部に通じるあらゆる隙間が塞がれた密室であった。
 火村の事情で数日後には日本に帰国しなければならないため、事件解決に費やすことの出来る期限は少ない。そんな条件の下、見事解決となるか?

 待ってました!
 なんといってもまずはこの一言でしょう。ようやくリアルタイムで火村シリーズの長編が読めました。嬉しい。それだけで満足なのですが、ま、感想も書きましょうか。
 扱っている事件は密室。うん素敵。
 トリック。うお、盲点。なるほどぉだから※※※※※※※※なのですね。
 火村。ラストはちょっと鬼気迫るものが(笑)。イエス、プロフェッサー。
 有栖。相変わらず珍推理炸裂ですね。サムライ・イングリッシュですか。
 火村&有栖コンビ。漫才かよ! ってな会話はやっぱり楽しい。でもなあ、この作品読んだらきっとアッチ方面では大変なことになるんだろうなぁ……(苦笑)。誤解を招く発言もあるしさぁ(168ページ下段参照)。
 ……読んだ人にしか解らん文章だなぁ上全部(笑)。
 ともかく、安心して楽しめるオーソドックスな本格ミステリです。傑作! とは言えないかもしれませんけど……。

Update:2002/05/16


まほろ市の殺人 冬 蜃気楼に手を振る

 初出:祥伝社/祥伝社文庫 あ20-1(2002年06月)

迷宮逍遙 有栖のミステリ・ウォーク

 初出:角川書店(2002年08月)

 角川書店/角川文庫 あ26-8(2005年03月) 解説:上原正英

比類のない神々しいような瞬間

 初出:光文社「ジャーロ No.9」掲載(2002年秋(10月))

 →『白い兎が逃げる』収録

推理合戦

 初出:Vodafone「綾辻行人×有栖川有栖 J-ミステリ倶楽部」掲載(2002年10月)

 →『モロッコ水晶の謎』収録

砕けた叫び

 初出:角川書店/角川スニーカー文庫『ミステリ・アンソロジーV 血文字パズル』収録(2003年03月)

スイス時計の謎

 初出:講談社「小説現代増刊 メフィスト」掲載(2003年05月)

 →『スイス時計の謎』収録

スイス時計の謎

 初出:講談社/講談社ノベルス アL-11(2003年05月)

 収録作品
 あるYの悲劇/女彫刻家の首/シャイロックの密室/スイス時計の謎

蕩尽に関する一考察

 初出:東京創元社「ミステリーズ! vol.01」掲載(2003年06月)

白い兎が逃げる

 初出:「週刊アスキー」連載(2003年07月〜11月)

 →『白い兎が逃げる』収録

虹果て村の秘密

 初出:講談社(2003年10月)

白い兎が逃げる

 初出:光文社/カッパ・ノベルス(2003年11月)

 収録作品
 不在の証明/地下室の処刑/比類のない神々しいような瞬間/白い兎が逃げる

 臨床犯罪学者の火村英生、推理作家の有栖川有栖のコンビが活躍する四つの事件。

「不在の証明」
 原島ビルの202号室で、コンピュータ・ソフトの製作会社を経営する黒須克也が、現場にあった文鎮で眉間と側頭部を殴打され殺害されているのが発見された。事件発生当時、そのビルへ出入りする犯人と思しき男を目撃した者がいた。その犯人と思しき男は、アクション作家で被害者の兄である黒須俊也だと目撃者は証言する。
 警察は黒須俊也を取り調べるが、彼は完璧なアリバイを主張した──。

「地下室の処刑」
 大阪府警捜査一課の森下恵一刑事は休暇のその日、大阪市内を歩いている最中にテロ集団《シャングリラ十字軍》の一員である小宮山連の姿を目撃した。休暇中だはあったが彼は小宮山を尾行し始める、そして機をみて応援を呼ぼうとした矢先──薬品を嗅がされて気を失ってしまう。
 森下が意識を取り戻すと、そこはどうやら地下室のようだった。椅子に縛り付けられて身動きは出来ない。そこで彼は不可解な事件に遭遇する。《処刑》と称して拉致してきた男を《シャングリラ十字軍》が拳銃で殺そうとしていたのである。しかしその《処刑》を受けるはずだった男が、《処刑》執行の直前に飲んだワインに混ぜられていた毒で死んでしまうのである。
 何故、これから拳銃で殺されるはずの男が、毒殺されなければならなかったのか……。

「比類のない神々しいような瞬間」
 上島初音という社会評論家の女性が心臓を一突きされて失血死した。そして遺体の傍らには「1011」とも読める謎の血文字が残されていた。

「白い兎が逃げる」
 どこか兎を思わせる劇団《ワープシアター》の女優の清水伶奈はハチヤと名乗る男からのストーキングの被害に遭っていた。これに腹を立てた劇団所属の脚本家の案で、ハチヤを「痛い目」に遭わせてやろうという計画を実行し、そして成功した──かにみえた。しかし事態は思わぬ方向へ。当のハチヤが小学校の兎小屋の側で死体となって発見されたのだ。

 ではそれぞれの感想をば。
 まずは「不在の証明」。いわゆる《アリバイ崩し》もので、これが僕の一番のお気に入りです。「双子」を利用したトリックの捻り具合が巧い。
 次に「地下室の処刑」。これはトリック云々よりも、舞台の設定と意外な動機が秀逸な作品です。ロジックで詰めていくとあの人物が犯人でしかない、でも動機がない──というプロットが巧いのですな。
 続いては「比類にない神々しいような瞬間」。ダイイング・メッセージというのはそれを残す必然性という問題があると思うのですが、これを巧く処理しているのがお見事です。クイーンの作品に触れているのも、この作者らしくて良いです。
 最後「白い兎が逃げる」。分量の約半分を占める長めの作品です。「地下室の処刑」と同じく意外な動機がテーマですね。が、事件自体はなかなか魅力的なのですが、う〜ん。他の作品よりはキレがないなぁと感じてしまったのでした。

Update:2004/12/31


助教授の身代金

 初出:講談社「小説現代増刊 メフィスト」掲載(2004年09月)

 →『モロッコ水晶の謎』収録

モロッコ水晶の謎

 初出:講談社「小説現代増刊 メフィスト」掲載(2005年01月)

 →『モロッコ水晶の謎』収録

モロッコ水晶の謎

 初出:講談社/講談社ノベルス アL-12(2005年03月)

 収録作品
 助教授の身代金/ABCキラー/推理合戦/モロッコ水晶の謎

First update:2000/11/14
Last update:2007/01/16

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